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 【2008年4月】
 ●クローバーフィールド/HAKAISHA
 ●船、山にのぼる
 ●つぐない
 【4月続き
 ●フィクサー
 ●パラノイド・パーク
 ●大いなる陰謀
 ●ラフマニノフ ある愛の調べ
 
4月続きその2
 ●ブラックサイト
 ●譜めくりの女
 
4月続きその3
 ●ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
 ●さよなら。いつかわかること
 ●NEXT -ネクスト-
 ●紀元前1万年

●『ブラックサイト』★★半
 (2008/米/1時間40分)4月12日公開

監督:グレゴリー・ホブリット
出演:ダイアン・レイン
   ビリー・バーク


 これは予想を超えて上出来のサイコ・サスペンス。
 殺人場面をネットで公開し、アクセス数が増えるほど死が早まるという残虐なサイトが出現、次々と犠牲者が衆目にさらされて行く、という設定がまず不気味。
 ダイアン・レイン演じるサイバー犯罪専門のFBI特別捜査官が、犯人と対決する。
 その展開は、意表をつく新味もあって充分に面白いのだが、ただ、犯人の側に意外な動機があって、それがけっこう理性的なものなので、犯行の狂気じみた性格とはちょっと乖離を感じさせ、ここは思いっ切りサイコ野郎な異常者で通したほうが良かったのではないか、とも思わせる。
 微細な点で気になったのは2番目の殺人で、手足をセメントで固定された犠牲者の周りを光熱ランプがぎっしりと取り囲み、アクセス数が増えるたびに点灯して行ってやがて焼き殺され
てしまう、という仕組みなのだが、これは相当に電力を消費し、一般家庭としては異常なメーター数値を示すはずだから、その辺から捜査すれば犯行現場をかなり絞り込めるだろうに、どうしてそうしないのか、やや疑問を感じる。
 ただ、そのくらいは瑕疵として、ダイアン・レインの好演ともども、娯楽映画としては充分なレヴェルに達していることは確か。
(原題:UNTRACEABLE)

●『譜めくりの女』★★
 (2006/フランス/1時間25分)4月19日公開

 監督:ドゥニ・デルクール
 出演:カトリーヌ・フロ
    デボラ・フランソワ


 監督のドゥニ・デルクールは、ヴィオラ奏者として実際にフランスの交響楽団の主席を努めたり、ソロ活動もしたことがあり、現在はストラスブール音楽院の教授も兼任しながら映画監督の2足のわらじを履くという、れっきとした音楽家である。
 だから、流石に演奏場面は真に迫って嘘が無く、選曲にも並みの音楽ものを遥かに超えた本格性があって引き込まれる。
 ただ、問題はお話しのほうで、どうにも志が高いとは言えない復讐劇であり、なにやら『ゆりかごを揺らす手』(1992)あたりを連想させられてしまう。あれはカーティス・ハンソンとしても職人的な手腕を見せるだけの心理サスペンスだったが、これも似たようなもの。
 音楽院への進学を夢見て日夜ピアノ練習に励む少女が、入学試験当日、審査委員長を努める人気女流ピアニストの前で実技の演奏を弾き出すのだが、突然入ってきたファンに応じてそのピアニストがサインを始めたのが気になって演奏を中断してしまい、不合格となる。
 絶望した少女はピアノに鍵をかけ、楽譜を封印して音楽への道を閉ざすが、長じて、くだんのピアニストの邸宅に子守の職を得て入り込み、やがて譜めくりとして信頼を得て、演奏会でも重用されるようになる。
 そこから彼女の復讐が始まり、ピアニストの家庭を崩壊へと導く…。
 設定として気になるのは問題の試験のシーンであり、その女流ピアニストは、試験会場に入る前にファンからサインをねだられても「あとにしてね」と断わっているのに、実技試験の真っ最中にその同じファンが咎められもせずに入って来てブロマイドを差し出す。当然、ピアニストはたしなめるところだが、何故か頷いてサインを始めてしまうのだ。
 しかし、どこの世界に、入試実技の最中に部外者が会場に入れるような音楽院が有ると言うのだろうか、しかも試験官のそばまで?
 ともあれ、監督はこれだけの音楽的才能を持っているのだから、このような志の低い映画でなく、本格的な音楽ものを是非とも製作して欲しいと切望するところ。

 内容としては★ひとつだが、そこらに期待して★1個おまけ(笑)。
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