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 【2006年1月】
 ●『ロード・オブ・ウォー
 
●『歓びを歌にのせて
 
●『男たちのYAMATO
 
●『ALWAYS 三丁目の夕日

●ロード・オブ・ウォー ★★★半
 (2005・米・122分)

 監督・脚本・製作:アンドリュー・ニコル
 出演:ニコラス・ケイジ
    ブリジット・モイナハン
    ジャレッド・レト


 これは遥かに期待以上で、問題意識は鋭く深いのに、映画としても充分に面白いという、芸術と娯楽とを見事に両立させた傑作! ニコルとしては『ガタカ』『シモーヌ』を超え、これでもう巨匠の域に近づくんじゃなかろうか。
 とにかく武器商人というものの実相がよく解り、フィクションではあるが、モデルになったユーリー・オルロフという男の話しを下敷きにして、ほとんど実際にあったことを描いているので、取引現場のやりとりなどは実に興味津々だ。
 国籍上はアメリカ映画となっているが、アメリカ資本はまったく入っていない。それもそのはずで、米・英・仏・露・中のUN安保理常任理事国を始めとする大国の武器輸出を鋭く告発していて、おまけに脚本完成がイラク戦争直前という時期では、米国内資本はみんな二の足を踏むのも当然だろう。
 だから、製作者も兼ねたニコルは資金集めにも相当苦労したようで、その上でこれだけの映画を作ったのだから、いち観客としては心から応援したくなる。
 撮影のエピソードで面白かったのは、武器庫のシーンに数千丁の銃を揃えるのに、模型を並べるよりも本物を調達したほうがずっと簡単で安く済んだ、という話し。現代の武器市場というもののおぞましさを、如実に物語っている。
 ジャレッド・レトがドラッグづけでボロボロの弟を演じていて、『レクイエム・4・ア・ドリーム』と同様なのがおかしい。

●『歓びを歌にのせて』★★半
 (2004・スウェーデン・132分)

 監督:ケイ・ポラック
 出演:ミカエル・ニュクビスト


 スウェーデンでは160万人動員で、小国としては超大ヒットだけに、ちょっと期待しすぎてしまった。ただ、同工のアマチュア合唱団ものでは、先の『コーラス』よりも出来はいい。
 8年先まで予定ギッシリという世界的人気指揮者が、身体をボロボロに壊してリタイアし、田舎町に引きこもる。だが、すぐに素性がバレて教会の聖歌隊に助言を頼まれ、渋々引き受けたところから合唱指揮に生き甲斐をみつけて行く…。
 お話しとしてはヒューマンで、ラストにも思わぬ感動はあるが、ただ、国際的マエストロというものの描き方に私見ではちょっと異議があるので、基本的に納得いかない面を感じ、採点ではその分を減点。

●男たちのYAMATO ★★
 (2005・東映他・143分)

 監督:佐藤純彌
 出演:反町隆史、中村獅童
    鈴木京香、仲代達矢


 なにやら泣ける映画として大ヒットしているが、涙腺はかなり緩いほうにもかかわらず、終始まったく涙は催さなかった。
 05年4月6日、鹿児島県枕崎の漁港を鈴木京香演ずる1人の女性が訪れ、仲代達矢演ずる老漁師に、戦艦大和が60年前の昭和20年4月7日に沈んだ場所(北緯30度43分、東経128度4分)まで船を出してほしいと懇願する、という発端からして、大和そのものよりも乗組員に焦点を当てる意図が窺がえるが、それなら、俳優たちの大芝居ではなく、もっと実際の乗組員に沿った実録ものとして観たい気がする。
 また、どうせ25億もの製作費をかけるのであれば、いちど大和の建造から最期までをきっちり観たいものだ。
 小泉の靖国参拝という愚行に配慮したわけでもなかろうが、戦争邦画でお馴染みの「靖国神社で会おう」という常套句がまったく出てこないのも、かえって不自然な印象。旧軍人のメンタリティを知るのに欠かせない要素だと思うのだが、製作に朝日が噛んでるせいかと穿ちたくもなる。
 しかし、好戦映画の傑作『博士の異常な愛情』が示す通り、人間の好戦領域を徹底的に抉ることによってこそ、究極の反戦映画となるのではないか。
 VFXの面でも期待外れで、せっかく実物大の大和を作っても、一度CGに取り込まれてしまうとどこか模型っぽくてスケール感が出ず、準備期間も仕上げの時間も、いまひとつ足りなかったのではと詮索してしまう。

●ALWAYS 三丁目の夕日 ★★★
 (2005・東宝、日テレ 他・133分)

 監督・脚本:山崎貴
 出演:吉岡秀隆、堤真一
    小雪、薬師丸ひろ子


 山崎貴は、『ジュブナイル』『リターナー』と観てきて、某所に…「このひとの、もう少し大人向きの作品も観てみたいけど、でも、たぶん永遠のジュブナイルなんだろうな」などと書いたもんだったけど、当の本人もその辺を意識していたんだろうか、今度は昭和33年の東京を舞台にして、ぐっとノスタルジックな下町群像を描き出した。
 東京タワーがまだ半分しか出来てない時期から始まり、完成の姿で終わるが、ここに出て来る子供たちはいわゆる団塊の世代真っ盛りだから、都電とか駄菓子屋とか氷式の冷蔵庫とか力道山の空手チョップとか、中高年には懐かしいものばかりで、普段は映画館に疎遠な層を吸引してるし、またそういう古いものが若いひとには意外に新鮮と、うまくヒットする要素をつかんでいる。
 ただ、出て来る人物像はたぶんに類型的で、借金のカタに売られた踊り子とか、親に捨てられた子が実はリッチな社長の御落胤とか、どこかで聞いたような話しが多いが、中では、集団就職列車で青森から上京してきた女の子(堀北真希)が活き活きとしていて面白く、当時の東北地方の過酷さも覗わせてしんみりさせてくれる。
 とにかくCGの進歩、VFXの発展が、当時の上野駅や銀座の街角などを息を呑むほどに再現して、これは見事のひと言に尽きる。







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