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 【2005年5月】
 ●海を飛ぶ夢
 ●コーラス
 ●コンスタンティン
 ●キングダム・オブ・ヘヴン
 ●インファナル・アフェア 3 終極無間
 ●ワンダーランド
 ●『ロング・エンゲージメント』追記

●海を飛ぶ夢 ★★★
 (2004・西・仏)

 監督:アレハンドロ・アメナーバル
 出演:ハビエル・バルデム


尊厳死という困難な問題を正面から扱って、志しの高さは正にリスペクトすべき映画で、本年度アカデミー外国語映画賞他、受賞多数だけど、アメナーバルの監督・脚本は、正攻法には違いないが意外性とか驚きは少なく、どこか既視感があって、物足りなさを思うのは、要求が高すぎるだろうか?

●コーラス ★★半
 (2004・仏)

 監督:クリストフ・バラティエ
 出演:ジェラール・ジュニョ、
    ジャック・ペラン


フランスで大ヒットした少年合唱もの、と聞けば、なにを置いても観たくなる(笑)。
ジャック・ペラン製作で、自らも出演しているところ、『ニュー・シネマ・パラダイス』に類似するが、これはかなり期待外れ。
問題児たちに合唱を教えて更正させる教師のお話しだったら、邦画の『独立少年合唱団』のほうがよっぽど上出来だった。
肝心の合唱を仕込む過程がおざなりで、「段々上達して行った」とナレーションを被せるだけじゃあ説得力は生まれない。
一見、音楽映画のようでいて、ここには音楽は内包されず、ただ外側からくっつけているに過ぎないのだ。

●コンスタンティン ★★半
 (2005・米)

 監督:フランシス・ローレンス
 出演:キアヌ・リーヴス、
    レイチェル・ワイズ


悪魔払いのシーンで始まり、キアヌ・リーヴス主演の異界ものとなれば、これは『エクソシスト』+『マトリックス』だ。だから、あくまで映像の懲り具合、VFXの趣向を楽しむもので、天使や悪魔がたくさん出てきても、どれも物理的で精神性を感じさせない点などをいちいち指摘するような映画じゃないのである。
その範囲で新奇な面白さは味わえ、実際、最後まで飽きなかった。

●キングダム・オブ・ヘヴン ★★★
 (2005・米)

 監督:リドリー・スコット
 出演:オーランド・ブルーム、
    エヴァ・グリーン


今やすっかり巨匠となったリドリー・スコットの、『グラディエーター』に続く歴史劇。
12世紀の、イェルサレムをめぐっての十字軍versusイスラムの攻防だが、単純に十字軍の英雄賛歌と行かないところが、イスラム圏をもマーケッティングしてるハリウッドの目配りで、イスラムの君主サラディンも寛大で開明的に描かれている。
戦闘シーンの物量は凄いが、今やこのくらいじゃさして驚かないほどCGの画造りは進んでしまった。おそらく撮影の段階からディジタル化されているせいだろう、かつてのハリウッド大作のようなテクニカラーの華麗な色彩に較べると、発色はかなり地味で、それが逆にドキュメンタルな真実味にもなっているのは怪我の功名か。
オーランド・ブルームは、この種のスペクタクル大作では『ロード・オブ・ザ・リング』の弓の名手で名を揚げたが、『トロイ』では気弱な弟役で頼りなかったし、体格的にもいかにも貫禄不足で疑問だったけども、実際観てみると、それなりに良くやっていて及第点。
王女役のエヴァ・グリーンは、典型的なクラシカル・ビューティだから、こりゃあハリウッドが放っておかないぞ、と思ってたら、案の定だった。ベルトルッチの『ドリーマーズ』など、彼女しか印象に残ってないもんね(笑)。

●インファナル・アフェア 3 終極無間 ★★★
 (2003・香港)

 監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
 出演:アンディ・ラウ
    トニー・レオン


これで三部作が完結。
「1」で指摘した欠点は多少ついて廻るが、そのくらい瑕疵として目をつむれば、このシリーズはやはり面白い。
時制の入り組んだ構成が複雑な上、人物の造形にも本物と潜入の重層性が仕組んであり、どれが善玉でどれが悪玉か、実は本人にも混乱を生みそうになるあたりが興味深く、仏教的な善悪一如を思わせて、タイトル「無間道」がそもそも仏教用語であることを想起させる。
共同監督・脚本のアラン・マックは、まだ30代だから、今後に大いに注目。

●ワンダーランド ★★半
 (2003・米)

 監督:ジェームズ・コックス
 出演:ヴァル・キルマー
    ケイト・ボスワース


これは試写で観る。公開は5月以降らしい。
1981年に起きた「ワンダーランド通り殺人事件」が題材だが、タッチがドキュメンタリィ調ではないので、いわゆる実録ものっぽさは薄い。
線の細い印象だったヴァル・キルマーが、けっこう貫禄をつけて、実在のポルノ男優を演じている。
ただ、ポルノがらみのシーンどころかヌードすら殆ど無く、これでR−15指定とは不思議。

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●それから、前回の『ロング・エンゲージメント』について、ちょっと追記です。
結尾の2行に…
>ただ、大いに盛り上がって感動する筈のラストは、予定調和ということもあり、意外に平坦。
>監督も、ちょっとみえみえの結末に、照れくさかったんだろう。
…と書きましたが、時間を置いてみたら、ここには単純な予定調和とも言いきれないほろ苦いものが含まれているので、あえてハッピーな盛り上げはしなかったのかも、と思いましたです。







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