|
|
【2005年9月】
●妖怪大戦争
●マザー・テレサ
●ふたりの5つの分かれ路
|
●妖怪大戦争 ★★
(2005・角川映画他) |
監督:三池崇史
出演:神木隆之介、菅原文太
|
宮部みゆき、荒俣宏、京極夏彦という作家連が、'60年代の大映映画をリメイクしようと企て、妖怪の大御所・水木しげるを引っ張り出し、三池崇史を監督に起用し、天才子役の神木くんを主演にして…、という経緯で、かつてのB級映画が内容一新、メジャーな大作として公開されるに至った。
そこには、何度かのホラー・ブーム、超常現象ブームを経て、妖怪やら超常やらが全くマイナーではなくなってる背景があるわけだが、やはり水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」ブームがいかに大きかったかと改めて思う。
だが、純粋に三池作品として観ると、クライマックスの妖怪大集合のスケールには圧倒されるものの、適当に散りばめた遊びの部分なども含め、あまり成功とは言えないのが残念なところ。
ただし、神木隆之介くん(12歳)は評判に違わぬ上手さ・自然さで、某編集子によれば「神木くん萌え〜」の状態になってる御仁が結構いるそうな(笑)。
|
|
|
|
●マザー・テレサ ★★★
(2003・伊・英) |
監督:ファブリッツィオ・コスタ
出演:オリヴィア・ハッセー
|
こういう偉人伝の類い、人名がそのままタイトルになってるような映画というのは、作品の出来うんぬんの前に人物の業績そのものが既にあるので、よっぽどひどい映画化でない限り、ある程度の感動はあらかじめ保証されているようなもの。
だから、たとえTV映画的な通俗感やB級映画的な誇張が多少は含まれていても、マザー・テレサの人となりをそれなりに忠実に描いてさえあれば、感涙を呼び、魂が浄化されることは必定で、実際、館内にはあちこちですすり泣きが聞こえ、こちとらも上映時間の半分以上は涙が乾かなかった。
あのジュリエットのオリヴィア・ハッセーが特殊メイクで老婆となり、背格好や立ち居振る舞いまでマザーそっくりに演じているのには舌を巻く。
ただ、もし生前のマザーがこの映画を観たら、「製作には幾らかかったんですか? そんな大金があれば、貧しい人たちのために使えるのに…」と言ったかもしれない、という感想を抱かざるを得なくなるのが、この作品の宿命というものだろう(笑)。
|
|
|
|
●ふたりの5つの分かれ路 ★★★
(2004・仏) |
監督:フランソワ・オゾン
出演:ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ
ステファン・フレイス
|
フランソワ・オゾンの新作は、一見、語り口だけで見せるような地味目なラヴ・ドラで、男女の出逢いから破局までを5つの挿話に分け、時間軸を反対に遡って、「離婚調停」→「倦怠」→「出産」→「結婚」→「避暑地の出逢い」といったふうに、終わりから始まりへという順番で見せて行くが、ギャスパー・ノエの『アレックス』みたいな徹底した逆回転ムーヴィーとは違って、ずっと落ち着いていて、あざとさ無しに男女の機微をじっくり凝視めて行く。
それぞれの挿話が独立したショート・フィルムのように完成されていて、デビュー当時から短篇の作り手として鳴らしたオゾンらしさを見せる。
あの傑作『まぼろし』には遠く及ばないものの、更に次回作への期待を繋げてくれる一作。
|
|
|
|
|
|
|