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【2008年7月】
●クライマーズ・ハイ
●庭から昇ったロケット雲
●テネイシャスD
運命のピックをさがせ!
●崖の上のポニョ
【7月続き】
●スターシップ・トゥルーパーズ3
●GATE
●ドラゴン・キングダム
●カンフー・パンダ
●ハプニング
●ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発 |
●『スターシップ・トゥルーパーズ3』★
(2008・米・1時間45分)7月19日公開 |
監督・脚本:エド・ニューマイヤー
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン
ジョリーン・ブラロック
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ハインラインの長編SF「宇宙の戦士」(1959)は、好戦的・保守的という批判もあれど、翌年のヒューゴー賞を受賞し、古典的名作として長らく君臨してきたが、映像化は実に'97年の第1作まで待たねばならなかった。
その第1作は、CGなどさすがに目を見張らされたものの、芝居の部分などは学芸会で、原作のような思想的に物議を醸す要素も少なく、本欄担当者は駄作と評価したが、多くのSF映画ファンからはなかなか好評であった。
第2作『ST2』(2003)(原題には「連邦の英雄」のサブタイトルあり)はVFX担当のフィル・ティペットが初監督したが、低予算のせいか憑依ものの密室劇になっており、大掛かりな戦闘シーンは無く、スケールの点で物足りなかった。
で、再び第1作の規模を取り戻すという触れ込みで作られたこの『ST3』(原題には「マローダー」のサブが付く)。
第1作からもう11年も経つので、この間のCGの進歩はかなりのものだから、その点だけでも相当のグレード・アップを期待するところだが、これは何とも落胆させられる、「超」の字の付く駄作だった。
詳述は避けるが、少なくとも、CGというのは機材やソフトの技術レヴェルが問題なのでは無く、使いこなしの能力こそがいかに重要なのかということをまざまざと見せつけらる結果。
とにかく、せっかくの作品世界をグズグズに駄目にしてくれるので、これに較べれば第1作がいかに「まし」であったかを如実に示すし、個々のシーンの演出も、安手のB、C級SFやテレヴィ映画でしか見られないようなお粗末ぶりで、唖然として言葉も出ない脱力もの。
原題のサブタイトルにあるパワード・スーツ「マローダー」も、多くの同類を見慣れた目には新鮮味はないが、それでも登場すれば一応の見せ場にはなっているのだから、クライマックスだけでなくもっと早くから活躍させるべきではなかったか。
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●『GATE』★★
(2008・米・1時間44分)7月19日公開 |
監督・製作総指揮:マット・テイラー
出演:マーティン・シーン
日本語ナレーション:松嶋菜々子
オリジナルスコア作曲:池 頼広
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世界核兵器解体基金(GND Fund)が製作したドキュメンタリー。
広島原爆の火を、最初に原爆実験が行われたアメリカはニューメキシコ州のトリニティサイトへ運び、爆心地=グラウンド・ゼロでその火を消すことによって「フルサークル(完全なる円環)」を作って、原爆をゼロに還元しようというプロジェクトの記録である。
つまり原爆の火を、それが誕生した地へ戻し、そこで消し去ることで負の連鎖を絶ち、永遠に眠らせたい、というわけだ。
まず、広島原爆で起きた火災の火が保存され、未だに燃え続けているということに驚く。
2005年7月の猛暑の中、その火を移したトーチランプを持ち、25日間をかけて、アメリカの西海岸から徒歩で2500kmもの行脚をしてトリニティサイトまで運び、持参した書や履いてきたわらじに点火して燃やして、さらにその灰を集めて核保有国の元首たちに送る、というのが一連の儀式である。
ひたすら原爆の火を守って歩き続ける僧侶たちの寡黙な姿と、その道中で出会う人々との交流が、ささやかでも感動的。
ただ、こういうセレモニーはあくまで当事者の自己満足じゃないか、という批判も出来るが、そこに注がれた真情は邪念を感じさせず、それ故、アメリカ人にも共感を呼んで、一行は行く先々で歓迎され、歓待されるのだろう。
ただ、本作はあくまで主催者側の記録なので、実際、道中では核保有を肯定するアメリカ人から非難を浴びることがなかったのかどうか、これだけでは判らない。
なお、松嶋菜々子がナレーターを務める日本語ナレーションでは、Russian National Orchestra を「ロシア・ナショナル楽団」と言ったり、指揮のミハイル・プレトニョフを「ミカエル」と言ったり、テキスト監修者不在を思わせるところがちと困る。
なお、タイトルの『GATE』はトリニティサイトの「門」のことであり、部外者の立ち入りを原則的に認めないこのゲートが、一行を受け容れて静かに開いていくところは、重々しく感動的である。
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●『ドラゴン・キングダム』★★
(2008/米/1時間45分)7月26日公開 |
監督:ロブ・ミンコフ
出演:ジャッキー・チェン
ジェット・リー
マイケル・アンガラノ
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アジアの2大アクション・スターと言えば、ジャッキー・チェンとジェット・リーであることに異論は無いが、このふたりは互いに尊敬しながらも、これまで共演作は無かったものの、それが遂に実現したのが本作、というのが第1の触れ込み。
ただ、一見すると香港映画か中国映画のようだが、これはれっきとしたハリウッド映画で、監督はアニメの『ライオン・キング』や実写とCG合成の『スチュアート・リトル』シリ−ズなどを作ってきたロブ・ミンコフだ。
だから、舞台はまず現代のアメリカ、ボストン。
カンフー・オタクの気弱な青年ジェイソンはギャングに脅され、馴染みの質屋を襲撃する羽目になるが、ギャングの凶弾に倒れた老主人から、元の持ち主へ返すようにと金色の棒を託され、なんとそれが孫悟空の武器である“如意棒”。 その棒の力で、時空を越えて古代の中国にトリップしたジェイソンは、ジャッキー演じる酔拳の達人やジェット・リー演じる謎の僧侶サイレント・モンクらの助けを得て、悪の支配者ジェイド将軍によって石にされた孫悟空を開放すべく、長途の旅に出るのだった…。
呼び物のふたりの対決場面は、敵味方ではなくあくまで初対面のお手合わせという設定なので、あまり真剣勝負ではなく、業(わざ)の見せ合いというところ。
ただ、監督がふたりに「速すぎるからもう少しゆっくり」と注文したそうで、その辺のセーヴのかけ具合が「演武」のように見せてしまったのかもしれないが…。
実写とCGの融合は得意のミンコフだけあって、アクション場面、スペクタクル場面は面白く観られる。
女優陣は、親の仇討でジェイソン一行に同道する少女(リュウ・イーフェイ)とか、悪の側の白髪魔女(リー・ビンビン)とか、いずれも美人で楽しませてくれる。
(原題:THE FORBIDDEN KINGDOM)
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●『カンフー・パンダ』★★★
(2008/米/1時間32分)7月26日公開 |
監督:マーク・オズボーン
声の出演:ジャック・ブラック
ダスティン・ホフマン
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これは予想以上の快作。
正直、デブ・キャラのギャグだけで92分間もつのだろうかと思っていたが、どうしてどうして、殆ど笑わせっ放しでファミリー向けアニメとしては申し分なく面白く、細部の彫琢も完成度はすこぶる高いし、予定調和とは言え結末にも説得力があり、充分に腑に落ち納得がいく。
カンフーの達人ならぬ、ただのカンフーおタクのデブ・パンダが、ひょんなことから最強の「龍の戦士」に指名され、モンスター的な悪役のスーパー・タイガー、タイ・ランと勝負しなければならなくなる。
言ってみれば、秋葉原あたりをうろついている格闘技おタクが、いきなりK−1王者と対戦させられるようなもので、さて、そこにどう説得力を持たせるかが最大のポイントであり、見せ所だ。
結果、そこのところは、100%満足とは行かないまでも充分の成功を収めている。
ただ、タイ・ランの復讐の動機が結構ドメスティックなものであり、もっと根源的な悪に根ざさないと本当の迫力は出て来ないと思うのだが、ファミリー向けにはこの程度のソフトな範囲に落ち着けておくのが正解と踏んだのだろうか?
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●『ハプニング』★★
(2008/米/1時間31分)7月26日公開 |
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:マーク・ウォールバーグ
ズーイー・デシャネル
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M・ナイト・シャマランは基本的に演出力で見せる監督だ。
『シックス・センス』や『ヴィレッジ』あたりのドンデン返しには小気味良く騙される快感があったが、それ以前に有無を言わせず観客を引っ張りこんで行く力量がものを言っていた。
本作は、ちょっと不可解な点は多いし、説得力も今ひとつだが、相変わらず演出の上手さで牽引し、最後までスリルを味あわせてくれる。
ある日、ニューヨークのセントラルパークで人々が突然時が止まったかのように立ちつくし、中には意味不明のことを口走ったり後ろ歩きを始めたりして、やがて自傷行為から自殺へと
向かう。工事現場では作業員たちが次々とビルの屋上から飛び降りてくるし、ピストル自殺した警官の銃は市民に順々に拾われて頭を撃ち抜く連鎖となる、…というオープニングが実に不気味でおぞましい。
ただ、今回は意表を突くようなドンデン返しは無い代わりに、文明批評的警告が前面に出ている点が今までに無かった特徴で、人類がこのまま環境破壊を止めずに生態系を乱し続けると、植物を始めとする自然界から手痛いしっぺ返しを食らうぞ、という警鐘がはっきり込められている。
こういうメッセージ性を正面から受け止めるか、ヒット映画で儲ける後ろめたさの免罪符に過ぎないととるかは、それぞれであり、本欄では後者が7割ぐらいかなという判断だが、いずれにしてもシャマランの非凡な才能がまたひとつ証明されたことは確かだ。
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●『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』★
(2008/日/1時間38分)7月26日公開 |
監督:河崎実
出演:加藤夏希
加藤和樹
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'60〜'70年代には、東宝怪獣映画の人気にあやかって邦画各社が同工の特撮映画を濫造したものだった。
大映が『ガメラ』、日活が『ガッパ』、そして松竹がこの『ギララ』という宇宙怪獣だったのだ。
(東映にも『怪竜大決戦』があったが、これは基本的に忍者もの)
タイトルが『逆襲』だけに、一応20年ぶりの続編ということにはなっているが、切り離して単独と見たほうが適当だ。
サブタイトルの『危機一発』は、『一髪』でなくわざと『一発』にしたジェームス・ボンドの第2作『007危機一発』にあやかっているのだろうけれども、別に銃を発射するシーンは無いので、この場合『発』にする意味は薄いように思うが、万事がそーゆー調子でいい加減なので、いちいち突っ込みを入れ
るのはこういうおバカ映画の場合、殆ど意味は無いと言える。
お話しとしては、ギララの登場の仕方を含め、怪獣にはさほど思い入れが無い感じで、破壊ぶりも通り一遍。
ここはむしろ、北海道の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)に集ったG8首脳たちのパロディのほうに重点が有る印象で、安倍晋三ならぬ伊部三蔵首相と小泉純一郎ならぬ大泉純三郎元首相をザ・ニュースペーパーのふたりがいつもの物真似で演じて笑わせるし、フランスのソルコジ大統領(サルコジにそっくり!)が、セクシー・アイドルの森下悠里ちゃん演じる通訳に色目を使ってベッド・インなんて、「フーシ」も効かせて面白
い。
大詰めでは、洞爺湖の守り神である「タケ魔人」さま(顔はビートたけしそっくりに造作し、声だけたけし本人の吹き替え)が登場し、邦画特撮お馴染みの着ぐるみ同士のプロレスごっこになるが、決着は、タケ魔人が光背のリングを取ってブーメランよろしくギララに投げつけると、ギララの首はスパっと断ち切られて地面に落ち、胴体は大爆発を起こして木っ端微塵に砕け散る。しかしここは、そんな強力な武器があるんなら最初
から使えば一発で終わりだろ、ってなツッコミを入れるのは無粋というもので、おバカ映画の正しい観賞法とは言えない(笑)。
それにしても、加藤夏希みたいなトップ・モデル上がりの美人女優が、タケ魔人を呼び覚ますために「ネチコマ、ネチコマ」と歌いながら、例の「コマネチ!」動作の入った踊りを盆踊りみたいに踊ったり、「タケ魔人さま〜、がんばれ〜!」と声を嗄らして声援したり、といったシーンを観ていると、いくら仕事とは言え、何だかいじらしくなる(笑)。
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