お月見の習慣と月待ちの行事
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仲秋(中秋)の名月 |
仲秋の名月といえば、八月十五日。こればかりは太陰太陽暦、いわゆる旧暦でなければなりません。仲秋(中秋)とは秋の真ん中(旧暦八月)のことで、さわやかな秋の夕べ、ひときわ大きく昇るまん丸いお月様を愛でる日でもあります。もっとも必ずしも満月とは限らず、満月は次の日の十六日であったり、十七日であったりします。
仲秋の名月は芋名月とも呼び、里芋やお月見団子などを供えススキを飾ります。
仲秋の名月は中国の仲秋節が日本に伝わったもので、朝鮮では秋夕(チュソク)といい、いずれも重大な年中行事になっていて、休暇をとって帰省する人も多いと聞いたことがあります。日本では平安時代の上流社会で詩歌文章を愉しむ中で始まったといわれ、島田忠臣の田氏家集に「八月十五日夜宴月」や「八月十五日夜宴各言志」と題して詩を詠んでいるのが初出とか。また、古今集の中には紀貫之や素性法師、凡河内躬恒などが十五夜の月を賛美した和歌が遺されています。
その後宮中で正式行事となったのが村上天皇の御代(966年頃)。しかしこの頃はまだ、月を愛でながら詩歌管絃して遊ぶものでした。今日のように月見に供物を供えるようになったのは室町時代からとか。昨今この仲秋の名月も以前に比べれば寂しいものになっていますが、月の復権とともに、各地の町おこしの一環としても観月祭など復活する機運も高まっているようです。
因みに2009年の中秋の名月は、五月に閏月が入った関係で遅く、10月3日になります。 |
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近代風俗志夏冬
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江戸時代の盲目の国文学者塙保己一(文政四年五月没)のために弟子達が観月の宴を催した際の逸話が残っています。彼は盲人の哀しさを句に託し
花ならばさぐりても見む今日の月
と詠じたため、座が白けわたったが、彼の夫人が機転を利かして即座に
明月や座頭の妻の泣く夜かな
と巧みにとりなして、深い夫婦愛を示したという。(塙保己一は『群書類従』の編纂者として知られています)
仲秋の名月を詠ったユニークなものに
月月に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月(詠み人知らず)
というものがありますが、ここには八つの月(旧暦八月)が読みこまれています。
(右の浮世絵は「角田川月見船」鳥居 清長画)
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●縄文時代からもあったお月見の習慣 |
日本では、月を愛でるという習慣は縄文時代ごろからあったともいわれています。平安時代ごろ中国から月見の祭事が伝わると貴族などは、詩歌管絃の遊興に生かし観月や舟遊びなどの宴を催したようです。また、平安貴族の風流人は月を直接見ることをせず、杯や池に映して楽しんだともいわれています。 |
●中秋の名月か、仲秋の名月か |
諸橋轍次著『大漢和辞典』には、
【中秋】 (1)秋を三分したなかの秋。仲秋。 (2)秋のまんなか。陰暦八月十五日。
【仲秋】 秋三箇月の中の月。即ち陰暦八月。中商。なかのあき。八月十五日を指す中秋は、これとは別の語。
と、明確ですが、他の漢和辞典等を見るとそれほど明確に分けてはいません。因みに『広辞苑』では、【中秋・仲秋】と全く区別していません。中国の「仲秋節」が日本に伝わったと考えれば、「仲秋の名月」と書くのが自然かなとも思います。『北京風俗図譜』に「仲秋拝月」という行事が紹介されています。いずれにしてもどちらが正しいというのはなさそうで、書く人の好みという程度にしておきましょう。 |
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十三夜と十日夜 |
●十三夜(じゅうさんや)
十三夜は月暦(旧暦)九月十三日の月宴ですが、中国から伝わったものではなく日本独自の行事です。十三夜の起源は諸説あるようですが、宇多上皇(延喜十九年)が始まりであったようです。当初は仲秋の名月のように、宮中の歌会でしたが、室町時代あたりから供物や華が供えられるようになったようです。ちょうど食べ頃の大豆や栗などを供えることから、この夜の月を豆名月または栗名月という。また、仲秋の名月に対して「後の月」とも呼ばれています。
●片見月
日本では十五夜(仲秋の名月)と十三夜どちから一方しか見ないことを片見月といって忌み嫌う風習があります。これは十五夜が季節の関係で雨になることも多かったためとか、江戸時代の遊里では十五夜と十三夜どちらか片方の月見しかしない客は「片見月」と言って遊女らに嫌われたところから伝わったといわれています。遊女らは大切なお客様の二度目の通いを確実に行うために、流行らしたのではないでしょうか。
蛇足ながら、日本の月見の行事の根底には月夜見命(ツクヨミノミコト)を引き合いに出すまでもなく、お月さまを神と感じる心があったのではないかと考えられます。
●十日夜(とおかんや)
十日夜は月暦(旧暦)十月十日の月で日本独自の月宴のひとつです。詳しい資料が少なく、地域も長野、山梨、群馬、埼玉などごく限定的であるようです。収穫祭の一環として広まったのではないかと思われます。(『人は月に生かされている』・志賀勝著・中公文庫) |
2013年の満月
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西暦日付
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旧暦日付
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歌川広重「月に雁」
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1月27日(日) |
十二月十六日 |
2月26日(火) |
正月十七日 |
3月27日(日) |
二月十六日 |
4月26日(金) |
三月十七日 |
5月25日(土) |
四月十六日 |
6月23日(日) |
五月十五日 |
7月23日(火) |
六月十六日 |
8月21日(水) |
七月十五日 |
9月19日(木) |
仲秋の名月
八月十五日
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10月19日(土) |
九月十五日 |
11月18日(月) |
十月十六日 |
12月17日(火) |
十一月十五日 |
1月16日(木) |
十二月十六日 |
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その他の月待ちの行事 |
十六日月(十六夜)、十七日月(立待月)、十八月(居待月)、十九日月(臥待月・寝待月)、二十日月(更待月)、二十三日月(二十三夜)、二十六日月(二十六夜)など
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