|
|
2011.4.19(月暦:三月十七日) |
|
|
潮汐波の項を作成中、東日本大震災が起こってしまいました(2011年3月11日、14時46分)。
潮汐波でも特にタイダル・ボアと呼ばれるアマゾンのポロロッカとか、中国銭塘江の海嘯を通して津波についても書いてみようと考えていました。
というのも、波高数十センチ程度の潮汐波がなぜ沿岸や河口付近で大きなボアとなって川を遡上するのか!という問題。これは津波にも通じるものがあります。
次ぎに1993年7月12日午後10時17分、マグニチュード7.8の大地震(北海道南西沖地震)に見舞われ、その3分から5分後という、かつてない速さで津波に襲われた奥尻島は、一瞬にして数百棟の家と200人以上の人命を失いました。奥尻島の各地区における津波の高さ(波高)は、稲穂地区で8.5m、奥尻地区で3.5m、初松前地区では16.8mに達したとの記録もあり、島の西側の藻内地区には、最大遡上高30メートル超という、とてつもなく大きな波が来ました。
巨大津波が起こる原因は別項で後述しますが、この奥尻島の津波から私たちは大きな教訓を得たはずでした。しかし、この教訓は、どうしても活かされているとは思えない経緯が続きました。
その一つが津波警報のあり方です。
気象庁では「津波による災害の発生が予想される場合に、地震が発生してから約3分(一部の地震※については最速2分以内)を目標に津波警報(大津波、津波)または津波注意報を発表」しています。
津波警報・注意報の種類は以下のとおりです。
種 類
|
解 説
|
発表される津波の高さ
|
大津波警報
|
高いところで3m程度以上の津波が予想されますので、厳重に警戒してください |
3m、4m、6m、8m、10m以上 |
津波警報
|
高いところで2m程度の津波が予想されますので、警戒してください |
1m、2m |
津波注意報
|
高いところで0.5m程度の津波が予想されますので、注意してください |
0.5m |
※日本近海で発生し、緊急地震速報の技術によって精度の良い震源位置やマグニチュードが迅速に求められる地震
津波警報を出すタイミングについては、確かに奥尻島の津波被害の教訓は活かされていましたが、問題は上記のような津波警報の内容です。
この警報で私たちはどれほど緊迫した状況を予測できるだろうか、ということです。
さらにいえば、この津波の高さで、「高いところで3m程度以上の津波が予想」される大津波警報ですが、「高いところ」とは、沖合の高さでしょうか、沿岸に及ぼす高さでしょうか。
また、この3mの津波が持つエネルギーがどの位あるか判然としません。沖合で3mの津波が入江に入ってきた場合、波のエネルギーが寄せ集められ、さらに湾や岸に共振して予想以上の高さ(10mをゆうに超える大津波)になることは過去にも相当ありました。
日本は地震大国であり、巨大津波にも何度か襲われた国でもあります。その割りには、津波警報が漠としてつかみどころがないのは解せません。
もちろんいたずらに危機感をあおることが良いことだとは思いませんが、津波の原理や津波の持つエネルギーの大きさをもっと知らせるべきだし、大津波警報を流すメディアもここをもっと強調すべきだと思います。
奥尻島を襲った津波の最大波高は、初松前地区の16.8mです。奥尻島はこれまで大きな津波は考えられなかった地域であるにもかかわらずこれだけ大きな津波に襲われたのです。それに比べれば、巨大津波に何度も見舞われ、津波が高くなりやすいリアス式海岸が多い東北地方の太平洋側での巨大地震です。この波高がどれだけ教訓となったか、今回の大災害に活かされたとは言い難い。単に想定外で片付けられるものではありません。
今回の地震に遭遇したのは東京・九段下の「カフェ・ド・クリエ」でのんびりコーヒーを楽しんでいた時でした。恐怖が走るくらいの揺れでしたが震源地は明らかに近くではないことはすぐ判りました。外に出ると九段下の交差点付近は近くのビルから飛び出してきた人や地下鉄からあがってきた人々で溢れていました。非常に長い揺れで、まだ、街灯や信号機がうなり音を上げながらグラグラしていました。
「震源地は?」というつぶやきに「東北地方です」と、携帯で情報を得た人が叫んでくれました。少し落ち着いてから一緒にいた相方のマンションを覗き、大きな被害がなかったことを確認して、飯田橋の事務所に走りました。幸い被害はありませんでしたが、その間20分、あるいはもう少し経っていたかも知れません。テレビをつけると震源地は宮城沖、マグニチュード8.8(その後訂正されてマグニチュードは9.0に)という巨大地震でした。当然大津波警報が出され、画面は宮城県から岩手県の港の映像が流れていました。
テレビは大津波警報を流し続けていましたが、私はその警報に苛立ちを覚えざるを得ませんでした。それなりの緊迫感をもった大津波警報でしたが津波の原理や特性、そのエネルギーの大きさを考えると、テレビに向かって「早く避難して!」「津波は波の高さだけではない!圧倒的な水量の多さとその破壊力だ!」と叫ばざるを得ませんでした。これほどの地震で津波が小さいわけがない!これが苛立ちの正体でした。
地震発生後直後に出された大津波警報
(2011年3月11日地震発生から15::30頃まで)
|
岩手県3m、宮城県6m、福島県3m、到達予想時刻は3時0分 |
「東北地方太平洋沿岸に大津波警報が出されています。早く安全な高台に避難してください。海岸や河口付近には絶対に近づかないでください。
これはあくまでも目安です。これより早く到達することもあります。これより高い津波が来る場合もあります。
また、第一波より第二波、第三波が大きくなることもあります。絶対に海岸付近に近寄らないでください。 |
●岩手県3m、宮城県6m、福島県3mの予想波高の是非はともかく、
「高い津波がくる場合もあります」、ではなく「地形によっては、より高くなるのが津波です」ということを知らせるべきでした。宮城県の6mの津波、岩手・福島の3mと予想された津波が意味するエネルギーとはいかなるものでしょうか。
津波は同じ海岸でもその地形により、海水の集中が起こったり、湾などによっては共振して非常に高くなることがしばしばあります。宮城県の予想波高6mが持つ圧倒的な水量とそのエネルギー、津波の基本的な知識さえあれば、湾によっては想像を絶する高い波となる恐れがあることは容易に想像できます。
過去の津波の教訓をもとに作られたという10mを超える防潮堤で安心していたという報告もありましたが、強引にせき止められた圧倒的な水量を抱える津波の波高がどれほどの高さになり、どれほどのエネルギーを持っているかすら科学的に検証されているとは思えません。
●「第一波より第二波、第三波が大きくなることもあります」ではなく、「第二波、第三波の方がより大きくなることの方が多い」こともしっかり伝えるべきでした。
実際今回の津波で甚大な被害を被った多くの地域の第一波は数十センチメートル程度でした。
その後、どの位の時間が経ったか定かではありませんが、危惧は現実となり、改めて津波の恐ろしさを目の当たりにすることになります。
東日本大震災の津波は、さらにその想像を超える未曾有の猛威でした。さすがに、この項の作成は中断せざるを得ませんでした。どういう内容にするか再考を迫られたのです。
今でも、どのような構成にするか整理がついていませんが、とにかく書き始めようと思います。
「月と月暦」の潮汐についての一ページとして書き進めていこうと考えています。 |
|
|