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エイプリルフール特集

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2009.4.2(月暦:三月七日)

エイプリルフールとウソのような本当の話

 今年のエイプリルフールいかがでしたか?エイプリルフールといえば、あんなに頑張っていた東京新聞が止めた? 余りにもひどい現実の嘘に嫌気がさし、心温まるウソのような本当の話を紹介することにしたというものらしい。朝一番、売店で求めた東京新聞を手にいつもの特派員便りを読むが、どうも勝手が違って肩すかしということに相成った。
 確かに昨今、「ウソのような本当の話、信じたくない嘘まみれの現実」が多すぎるきらいがある。

 低い支持率の中でやたらご機嫌な麻生総理、小沢一郎の第一秘書の逮捕で一気に元気を失った民主党。一時期「経済は一流、政治は三流」といわれたことがあったが、政争なき政局に一喜一憂する永田町の三文芝居をいつまでもつきあわされている国民は不幸というほかはない。そして、その三文芝居をあおっているのがマスコミという構造は、百年に一度の世界的な不況という状況になっても変わらない。もっとも、それを許しているのは有権者であったり視聴者でもあるわけで、政治批判をすれば、マスコミ批判をすれば「天に唾する」ことになるから厄介だ。
 言っているのか言わされているのか、お笑い芸人までもがバラエティー番組などでおもしろ半分に?、無責任に?政治批評を垂れ流す。
 思えば、「ウソだろう!」という事件は、一級建築士の偽装、溢れる不法放棄の山、ペアレンツモンスターに悩む教師、暴力患者に翻弄される病院、食品偽装や料理の使い廻し、自己虫に溢れる行為や事件、後を絶たない飲酒運転とひき逃げなどなど、あげればきりがない。本当のようなウソの話が色あせるはずだ。

 まあ、こんな世の中だからこそ、まじめに?エイプリルフールを考えることも必要かな、ということで、今年は何の仕掛けもしなかった者の戯れ言。

 一世を風靡したあのイギリスのBBSのするエイプリルフールは大がかりであった。古くはスパゲッティーのなる木を放映してみたり、人まねをする熊を見せるため、精巧な熊のぬいぐるみを作り、それを自然に演じられるように、役者の卵は血のにじむような努力を惜しまなかった。去年もCGを駆使して空にペンギンを飛ばしたりとにかく仕掛けがスゴイ。
 フランスのエイプリルフールは風刺とエスプリを感じさせるものが多いように感じる。その最たるモノが、フランスの名門新聞「ル・モンド」を模した「贋ル・モンド」で、それが価格が本紙の7倍弱であったにもかかわらず、売れに売れて増し刷りをしたというから面白い。

 このいずれも、エイプリルフールであることを明かさないのが特徴だ(ヒントが隠されている場合も多い)。
 そして、だます側には流儀が、だまされる側には品格が問われるのもエイプリルフールである(これは、エイプリルフールにかぎらず、ユーモアやジョークに対してもいえることかも知れない)。

【だます側の流儀】
 ・罪がないウソ、人を傷つけないウソであること
 ・なにがしかのユーモアやウィット、批評精神があること
 ・だまされた人が思わず楽しくなる、温もりを感じさせるモノであること
 ・決してやりすぎないこと
 など

【だまされる側の品格】
 ・だまされても決して目くじらを立てないこと
 ・だまされたらウィットに富んだ切り返すくらいのセンスをもつこと
 ・だまされたことを愉しむ度量をもつこと
 など

 イラク訪問で靴を投げつけられて株をあげたのはブッシュ元大統領、同様にイギリスで株を下げたのは中国の温首相、決め手になったのはユーモアのセンスであった。

2008.7.4(月暦:六月二日)

ウソの効用とエイプリルフール

 イギリスやフランスを筆頭に欧米ではエイプリルフールは国民の年中行事として定着しているが、日本ではそれほどではない。理由はどの辺にあるのだろう。いわゆるユーモアやジョークに関する考え方の差だろうか。
 それでも日本のエイプリルフールの武勇伝は…ある。特に朝日新聞が以前よく仕掛けはした。その最たるものが、「初の外国人閣僚誕生」と銘打ってサッチャー女史を外相に起用したというもの。確かオチ無しで掲載したと記憶している。しかし、極めてまじめな読者等の大抗議の前にあえなく撃沈している。たいがいは翌日訂正記事の掲載を余儀なくされている。「公器たる大新聞がウソ記事を載せていいのか」というのが主な内容だが、無粋といえばこれほど無粋な話はない。以降朝日新聞がエイプリルフールを特集したことはなかった、と思う。
 事実上の国営放送(公共放送)であるNHKは仕掛けようという気配すらないが、イギリスのBBCの度重なる大ヒットと比較すると際だっている。
 しかし、なぜか、東京新聞だけは妙に頑張っている。ここ何年かのエイプリルフールを拾ってみるとこうである。
「きん(金)さんぎん(銀)さんに、どう(銅)さんという三つ子の妹がいた」(かっこ内の漢字は筆者注)
「リストラされた男性と路地裏の犬の友情――この犬は忠犬ハチ公の子孫だった」
「沖縄に『幻の新島』地震頻発で再浮上」
「シマウマが競馬にでるのも秒読み」
「日本にオバマ氏の異母弟」と毎年1面の大半を使って報じている。もちろん「今日はエイプリルフール」という但し書きは残念ながら避けられない。
 それにしても、エイプリルフールの基本スタンスでもある「罪のない、人を傷つけない、ついた人もつかれた人もちょっと楽しくなるシャレの効いたウソ」を考えるというのは案外難しいものである。私も何度か仕掛けはしたが、ヒット作は決して多くはない。

 ユーモアやジョーク、ウィット、パロディなどに変わる日本語を探してみると、洒落、冗談、軽口、地口、オチ、諧謔、滑稽、風刺、川柳など結構多いのに驚かされる。笑いの文化は決して欧米に負けていない・・・。しかし、このいくつかはなじみが薄くなっている。洒落のように本来の意味よりかなり軽くなっている場合も多いし、お笑いブームもせいぜいギャグとかオチ、駄洒落が横行している感がいなめない。人と人の潤滑油、つかみとしてのユーモアやジョーク、レアな切り返しなどを磨き、つきあい上手を心がけたいものである。
※注:風刺はイタリア語の<caricatura >、英語で<caricature>(キャリカチユア )の翻訳語)

噴飯悪魔の辞典』の嘘の項を見ると稀代の慧眼家たちが織りなすウソの本質を垣間見せてくれる。

「真実」の対語だが、「これは真実だ」と断言することはうその一種である。(日高敏隆)

 最初に、やや声を落した「これは本当のことだけどね」という言葉から開始される総ての話と、最後にやや声を落した「これは本当のことだよ」という言葉で締めくくられる総ての話。そして、最初にも最後にも、「本当だよ」という証明のつかない、総ての話。「本当だよ」。(別役実)

 アマゾンの奥地に、全身がまっ黒な色をした珍しいウソがいると伝え聞いた鳥類学者が調査にいってみたら、それは、実は、まっ赤な嘘だった、という話は、もちろん嘘だ。(横田順彌)

 覇者の常識、弱者の智恵。
 言葉や文章の中に、先天的に宿る欠陥。
 別の嘘がとってかわるまでの真実。
 嘘と真実とが、実は同質の美徳であると思いいたることができず、人間のくせに嘘発見器を発明した者がある。もしそれがほんとうに機能したら、一番喜ぶのは悪魔である。(安野光雅)

「そのうそ、ほんと」という言葉が、日本に流行したことがあった。知ってる知ってるという人があれば、その人のとしがわかる。しかし、こんな微妙な表現のできる若い女性は、今やどこをさがしてもいない。「ウソー!ホント?ホントニ?ウソー!ウソー!ウソー!ホント?」こういう返事しかしてくれぬ。ある国立大学の教授に「どうしてこんなことに」と質問されたので、言下に「共通一次試験などのせいです。ウソ、ホント、と答える訓練を、あなたがたが、十何年も続けさせた結果です」といいきった。するとその教授、大声で叫んだ。「ウソー!」もう、なにをかいわんや、だ。(なだいなだ)

 本家A.ビアスの『悪魔の辞典』(岩波書店)には、残念ながら「ウソ」の項はなく「嘘つき(LIAR)」があるのみで、「自由旅行ならぬ自由悪行の権限を与えられている法律家。」(西川正身選訳)とある。

 長い引用となったが、この手のウソはユーモアやジョークのネタになる。また、ユーモアは洗練されたセンスや場の空気を読む洞察力、ものの本質を見極める智恵や教養が求められるものである。そして最も求められるのが人間愛ではないだろうか。
 世の道徳家には非難されそうだが、「罪のない、人を傷つけない、ついた人もつかれた人もちょっと楽しくなるシャレの効いたウソ」は、普段から磨いてコミュニケーション力を高めて欲しい、とひそかに思う。

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