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阿波踊りで吹かれる主な曲(篠笛譜面)

 阿波踊りで吹かれる代表的な曲として、「ぞめき」「阿波よしこの」「吉野川」「祖谷の粉ひき唄」「阿波の麦打ち唄」などがあげられます。篠笛はこれらの曲の主旋律(メロディー)を奏でるという役割があります。
 和モノ全般に言えることですが、洋楽のように譜面で覚えるということになじまない独特の「浮き」とか「間」というものがあります。特に阿波踊りは「手をあげて、足を運べば阿波踊り」と言われるように自由度の高い踊りで、「連」によって、踊りはもちろんリズムも旋律も千差万別、鳴り物の音を聞けばどの連かがすぐ解る、と言われる位です。
 ということで、本来はその連の「リード笛」の方から、見て聴いて、実際に指導を受けながら学ぶことが最短の道ということになりますが、篠笛奏者を育てるのは以外に難しく、身近に指導者に恵まれないケースも多く見受けられます。そのため、当サイトでは阿波踊りの篠笛をはじめるキッカケになればと採譜した曲の数々の譜面を公開しています。
 しかし、阿波踊りの篠笛は曲を演奏するためにあるのではなく、踊り手をいかに楽しく浮かせ、はねさせるかにあるので、前述したように譜面で表現するには無理があります。
 従って、当譜面はあくまでも旋律(メロディ)やフレーズの運指や曲調を理解するための一助となればという思いがあります。これをキッカケにして、気に入った連の音をよく聴き譜面では表しきれないものをくみ取っていただければ幸いです。
 例えば、阿波踊りのリズムに代表される「カンカ カンカ」とか「チャンカ チャンカ」を譜面に表すことは非常に難しいことです。このリズムはジャズでいうところの「バウンスリズム」とか「スウィングリズム」などと似たところがあり、「ハネ」とか「浮き」と呼ばれるものです。当譜面では付点四分音符と八分音符(3対1)で表していますが、実際には「表の音=チャン」と「裏の音=カ」は三連符(2対1)に近いのではないかと思われ、これを譜面で表現するには複雑になりすぎ、本来の意義を失ってしまいます。(「公開にあたって」はこちらを)
 ※参考までに数字譜を付けてみました。この数字譜は鯉沼廣行先生の作譜法を参考にしたもので、この譜面の読み方は、「篠笛の譜面の見方」に示しています。

■ぞめき

 阿波踊りのお囃子を総称して「ぞめき」と呼んでいるようで、確かな定義があるわけでもなさそうです。それだけに、連(踊りのグループのこと)によって様々な「ぞめき」が存在します。
 いくつかの連が合同で演舞する場合、それぞれの「ぞめき」を勝手に演奏してはバラバラになってしまいます。大太鼓や締太鼓などの打楽器の場合は比較的合わせることができますが、篠笛は、旋律が違っては簡単に合わせることができません。そのため、暗黙の内に「協会仕様」、「正調ぞめき」などと呼ばれるものがあるようです。
 一般的に「正調ぞめき」と呼ばれるものは途中一小節だけ5拍子になります。だから一回毎に裏になったり表になったりで、4回繰り返して元に戻るというものです。4拍子にまとめて吹く連もありますが、最近は正調に戻す傾向にあるようです。笛だけで踊るとちょっと足が気になりますが、この篠笛の「ゆれ」と鉦、大太鼓、締太鼓など他の楽器とのかね合いがおもしろい。
 当ページでは代表的な「ぞめき」の旋律を二つあげておきます。
●譜面を見る

■阿波よしこの

「阿波よしこの」の第一人者といえば、2008年4月6日、100歳で逝去されたお鯉さんこと、多田小餘綾さん。
http://www.okoisan.com/cd.html
 このお鯉さんの三味線と唄に合わせて吹かれている「よしこの」はスロー踊りによく使われています。
 この「よしこの」も、連によって微妙に異なりますが、この曲はピンで吹くケースが多いので踊り手と吹き手の絶妙な間のバランスで吹かれれば良いのではないか、と勝手に考えています。

 ●「よしこの」の歌詞を入れておきます。

  ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ
  ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ
  阿波の殿様 蜂須賀さまが
  今に残せし 阿波踊り

  ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ
  ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ
  笹山通れば 笹ばかり
  猪 豆喰て ホウイ ホイ ホイ
  
  笛や太鼓の よしこのばやし
  踊りつきせぬ 阿波の夜

  ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ
  ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ
  踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら
  踊らにゃ損々
 
  ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ
  ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ 
 

■吉野川

「吉野川」という曲はエレキギターの寺内タケシが本家阿波踊り(殿様連)と共演したときに即興で演奏したものだそうです。
「吉野川」もかなり一般的になってきましたが、徳島や高円寺などで吹かれる吉野川は連によって多少違いがあります。どれがオリジナルかは良くわかりませんが(多分、徳島の殿様連の吉野川が原曲?)、徳島や高円寺の協会で共通に吹かれるものもあります。(若干譜面を訂正しました。訂正日:2013.2.4)
●譜面を見る

■祖谷の粉ひき唄

 最近阿波踊りでよく吹かれるようになった徳島の民謡です。歌詞にある「かずら橋」は日本の三大奇橋にあげられる観光名所(国・県指定重要有形民俗文化財)。
 この祖谷の粉ひき唄も、連が変われば微妙に違いがありますが、一般的に吹かれているものを採譜してみました。

 ●「祖谷の粉ひき唄」の歌詞
   祖谷のかずら橋 雲の巣(ゆ)のごとく 風も吹かんのに ゆらゆらと
   吹かんのに 吹かんのに風も 風もふかんのに ゆらゆらと

※日本三奇橋:猿橋(大月市)、かずら橋(三好市=写真下/四国・徳島 三好観光サイトより)、錦帯橋(岩国市)をあげるケースが多いが、錦帯橋の代わりに木曽の桟(かけはし=長野・上松町)や神橋(日光市)、愛本刎橋(富山・宇奈月町)をあげる場合もあります。
●譜面を見る


■阿波の麦打ち唄

 中国地方で農家の庭先に積み上げられた稲の穂を、何人かで、唐竿やくるり棒で叩きながら唄われていたのが「麦うち唄」で、この「麦うち唄」が徳島に入り、藍の産地でもあった吉野川流域では、この唄を唄いながら藍葉を唐竿で叩いていたとも。
 現在ではこうした作業もなくなり、花柳界のお座敷唄となっているようです。
 三味線の音色がなんとも哀愁があっていい。できれば三味線と篠笛で合奏したいものです。

 ●「阿波の麦打ち唄」の歌詞
   阿波の藍ならヨ ヨホホーヤ 昔を今に
   染まる色香は 変りゃせぬ
   ヨホホーヤ トヨエ サー ウットケ ウットケ
   鳥もハラハラヨ ヨホホーヤ
   夜もほのぼのと 鐘がなります寺々に
   ヨホホーヤ トヨエ サー ウットケ ウットケ
   十八招けば 石でも粉になる
   お庭にカラツは いけてない
   ドシドシ もちゃげて上げて 打たシャンセ
●譜面を見る

 この他にも、様々なシーンで使われる曲があります。
 元来阿波踊りは町流しが主流でしたが、徳島や高円寺などでは、舞台で演じられる機会が増え、照明や音響効果、その構成も演出的な工夫が加えられるようになってきました。この流れに沿うように、「麦打ち唄」や「粉ひき唄」などが多く取り入られ、演舞に変化が生まれ、魅せる演出が多くなってきました。






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