潮汐力の奥深さ
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●月の潮汐力と地球の自転軸（地軸） |
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地球の自転軸（赤道傾斜角）は、約23.4度傾いていますが、その理由は巨大衛星が衝突した際に傾いたとか、巨大衛星が近くを通過したためなどいろいろな説がありますが、決定的な原因はまだ確定していないようです。しかし、月の存在が自転軸の傾きを安定させていることがわかっています。
※正確に言えば、太陽の摂動運動とか歳差運動、月の引力、他の天体などの影響を受けて地軸の傾きは極めて長い周期でわずかながら変動しているようです。
いずれにしても、この地軸の傾きが安定していることにより、北極点の延長線上には常に小熊座の北極星が輝き、北半球で見える星はすべてこの北極星を中心に円を描くように動いて見えます。
また、地軸の傾きが23.4度にほぼ固定されているため、地球は四季という奇跡的な恩恵を受けています。北半球では夏至の時、最も南中高度が高く昼の長さが最も長くなり、冬至の時南中高度は最も低く夜の長さが最も長くなります。そして春分や秋分の時、昼と夜の長さが同じになります。このように南中高度と日射量の周期的な差によって季節の変化をもたらすわけです（もちろん、地球のすべての地域で四季が明確に感じられるわけではなく緯度が高ければ夏が短く冬が長くなるし、赤道付近では冬という感覚がありません）。また、実際の寒暖は海水温度や気圧変動など様々な要因によっても影響されます。
では、この地軸の傾きがもっと大きかったらどうなるか、といえば、季節の変化は今よりもっと急激な変化をもたらすでしょうし、傾きがもっと小さかったら、四季の変化は余りなく、暑い地域と寒い地域が極端に分かれることになります。
いずれにしても、地球の自然環境はこのように奇跡的なバランスによって保たれ、その周期性によって、生物は季節の変化を敏感にかぎ分けて、あるいは予測して生命維持と生育に役立てているのです。
参考までにあげれば、太陽系の他の惑星の地軸（赤道傾斜角）の傾きと自転・公転周期は下表の通りで、火星の赤道傾斜角が25度と比較的地球に近く（但し、火星の地軸が地球のように安定はしていない）、その一日も24時間強なので、地球と似た季節の変動があるため、ひょっとしたら生物の存在の可能性もというロマンをかき立てられるのも頷けます。 |
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| 惑星 |
赤道傾斜角 |
自転周期 |
公転軌道 |
| 水星 |
0 |
58.65日 |
88日 |
| 金星 |
178 |
243.0日 |
224.70日 |
| 火星 |
25 |
686.98日 |
1.026日 |
| 木星 |
3.08 |
11.86年 |
0.414日 |
| 土星 |
26.7 |
29.46年 |
0.444日 |
| 天王星 |
90.9 |
84.02年 |
0.718日 |
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※金星と天王星の赤道傾斜角が90度を超えています。これは自転方向が逆向きであることを意味します。
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●火山と潮汐力 |
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潮汐力は火山の噴火にも深く関わり、普賢岳の大火砕流も大潮の満潮時に起こり、三宅島の噴火や地震も潮汐力の周期で起こったことなどがわかり、以前に遡っても、大潮時に起きた噴火は規模が大きいというデータがあります。さらに驚くべきことは、スイスのジュネーブにあるＣＥＲＮ（ヨーロッパ素粒子研究所）の巨大加速器ＬＥＰで行われている素粒子実験に月の引力が影響を与えていたことが明らかになり、その後実験では月の引力によるゆがみを補正することにしたそうです（「ニュートン」―月のミステリー―）。月の引力は地上にも働き、十数センチ程度押し上げているのです。
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月の潮汐力によって繰りかえされる潮の満ち干は天然の干潟を形成し、太陽の恵みを取り入れて多くの生命を育んでいます。また、大きな干満差は海の浄化作用にも大きな影響を及ぼしていることが証明されています。しかし、その干潟が開発という名の下に次々と失われていくのはいかがなものかと改めて問い続けていきたい。この問題は根が深く、治水や防災の観点からも検討されることが必要でしょう。天然の干潟は潮汐力だけで育まれるものではなく、川や森に負うところも大きいからです。 |
月のリズム
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月のリズムとは、私たち地球に及ぼすものに限っていえば、主に月と地球、太陽の位置関係によっておこる月の満ち欠けや、月明かりの変化、潮汐力の変化などのリズムによって引き起こされるもので、動植物のライフスタイルの形成に不可欠なものです。
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■生物は月の満ち欠けや月明かり、潮の満ち干を知っている
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生物が月の明るさ（満ち欠け）を知っているということは、よくいわれるところです。特にアカテガニや海亀は、新月や満月の大潮の満潮時に産卵することで知られています。満潮後、卵は引き潮に乗って沖合深くまで流れていくことができるからとか・・・。サンゴの満月の頃の産卵も有名です。（注：サンゴの産卵はその種類によって、大潮の頃以外にも産卵することがあるようですが、月のリズムに関係があるということは間違いがないようで、研究観察が待たれるところです）
川で生まれ、北の海で育ち、生まれた川に戻って産卵する（サケの遡上）といういわゆる回帰習性をもつことで知られるサケ。サケはどうして生まれ故郷の川に戻れるのか、川が近くなればその「におい」の記憶に頼って戻れるという説が有力ですが、遠く離れた海でどのように方角を決めているのかはまだ解明されていません。今までは、地磁気の感覚があるとか、太陽の軌道と体内時計を連動させているという説があったそうですが、＜独立行政法人 さけ・ます資源管理センター（札幌市）＞の調べでサケの移動には、どうやら月明かりが関係しているということがわかってきました。サケは満月期に海面近くを遊泳し月の軌道を長時間確認しているというのです（日本経済新聞、2004年4月4日）。
このサケについては、もっと不思議なことがあります。たとえばサケは川で生まれ海で育ちますが、川は淡水で海は海水です。淡水で機能するようにデザインされた細胞が海水で適応するように変化し、再び川に戻るため淡水で生きられるように変化するのですが、この変化の引き金が月の位相に関係しているというのです。この変化は必ず新月の日に行われるというから、月のリズムが生命に与える影響の大きさに脅かされます。
大潮の満潮期のお産は安産であるとか（もっとも最近は自然分娩は数少ないので必ずしも合致はしないそうです）、医療現場でも大潮期の手術は出血が多いというデータが報告されています。
人間の生体時間は約24.8時間で、月の一日の周期と不思議な一致を見ることができます。また、元兵庫県警の黒木月光氏のデータでは、半月の時に交通事故が多く、満月の日には死亡事故（大事故）が多いということが報告され、月との因果関係を示唆しています。
もっとも、これらの報告について、生命活動は、様々な要因で成り立っていて、月の影響だけを取り出して証明するのは極めて困難なため、科学的には証明されていません。それでも、生物の生体リズムは、月や海と密接な関係があり、人間もまた、そのころのことをDNAが記憶していたとしても不思議ではありません。月のミステリアスは科学の及ぶところではないのです。
■もっともっと月を知ろう
台風情報などで、よく「ちょうど満潮時刻に重なるので警戒が必要です。」という文言を聞くことがありますが、大潮時期に重なれば、高波もより警戒しなければなりません。旧暦の知識があれば今大潮なのか小潮なのかおおよその見当がつきます。たとえば大潮は新月と満月の後3～4日間、小潮は半月の頃の前後3～4日間というように･･･。満潮時間も摩擦の関係で実際の月の動きから数時間遅れることを併せて知っていれば、干満情報を見なくても推測することは可能です。
潮干狩りももちろん、大潮時の引き潮の時間をねらえばより大きな収穫がありますし、サーフィンが好きな人もこの潮の干満を知らなければ、まともに波に乗れません。釣り人も、大潮の時は魚が活発になるのでよく釣れるといいます。海に生きる人達にとって、月の潮汐力は生き死にも影響することもあるので、潮の流れを知る上でも月の満ち欠けは大切な情報です。
最近では、陶芸家が窯に火を入れたり、焼いたりする上で、また、農業や林業の世界でも、月のリズムを活かした取り組みが増えてきました。
月は、衛星としては太陽系の中でもその大きさは際だっています。月の引力があればこそ、地球はその傾きを安定させることができ生命誕生の可能性を創出し、進化を助けたといわれています。まだまだ月のリズムは解明されていませんが、人間の生体リズムや感情、自然現象に深く関わっているものと思われます。なぜか忘れられた感のある＜月＞はもっともっと見直されるべきものであろうと考えています。
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潮汐力について＜潮汐力の奥深さ＞潮汐力と釣果＞月の潮汐力と潮干狩り＞タイダル・ボアについて |
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