花札と旧暦の関係
|
|
|
|
花札というと、賭博性のあるゲームというイメージが強いため、遊んだことのある人とない人と大きく別れるのではないかと思いますが、花札を楽しんだ人の多くは、月が旧暦であるかどうか余り気にしていなかったのではないでしょうか。下の表に示したとおり、月と花を見比べれば、それがどうも今の季節感とずれているなあ、と気がつくはず。
温暖化が進み、二月の梅、三月の桜は余り違和感がなくなってきましたが、菖蒲の五月はやはり早いし、八月の月は当然旧暦八月十五日の中秋の名月が背景にある。九月の菊は五節供のひとつ重陽(旧暦九月九日)からきています。
旧暦で行われていた伝統的な年中行事も単純に西暦に置き換えて行う無神経もそうであるが。豊かな四季に恵まれ、季節感に敏感なはずの日本人がこういったことに無頓着になっているのは非常に残念な気がします。
|
花札の月と花、種類について |
花札について調べはじめ、意外にその出典やいわれが案外おもしろかったので、旧暦と関係ない部分もあるが整理してみたい。下の表は、花札の種類を月別に並べ、役札の絵柄をまとめたもの。 |
月名
|
札の種類
|
一月(睦月)
|
松に鶴に旭
|
|
赤短(あかよろし) |
二月(如月) |
|
梅に鶯
|
赤短(あかよろし) |
三月 (弥生) |
桜に幕
|
|
赤短(みよしの) |
四月 (卯月) |
|
藤に時鳥
|
赤短(無地) |
五月 (皐月) |
|
菖蒲に八橋
|
赤短(無地) |
六月 (水無月) |
|
牡丹に蝶
|
青短(無地) |
七月 (文月) |
|
萩に猪
|
赤短(無地) |
八月 (葉月) |
薄に月
|
薄に雁
|
|
九月 (長月) |
|
菊に盃
|
青短(無地) |
十月 (神無月) |
|
紅葉に鹿
|
青短(無地) |
十一月 (霜月) |
小野道風に柳と蛙
|
柳に燕
|
赤短(無地) |
十二月 (師走) |
桐に鳳凰
|
|
|
|
※一月の「松に鶴に旭」の意匠は、めでたいものの代表格で江戸時代の蒔絵などにもよく見られる絵柄なので、出所は多分その辺にあることがうかがえる。
※二月の「梅に鶯」は春を告げるめでたいものの組み合わせか、大津絵にもこの絵柄は何種類か観られるようだ。
※一〜二月の短冊は「あかよろし」、これは明らかに良いという意味で、三月の短冊に書かれた「みよしの」は桜の名所吉野の美称である。いずれも春を愛でる日本人の感性がうかがえる。
※四月の藤、時鳥は初夏を告げるものか。
※五月の「菖蒲に八橋」は伊勢物語の一節を出典としているそうで、「から衣着つつなれにし妻しあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」ここにかきつばたを詠みこんでいるという。「いずれ菖蒲か杜若」といわれるように、菖蒲と杜若は区別ができないくらいに美しいという意味。
※七月の「萩に猪」は、道才カルタの「向かうシシに矢立たず」からきているのか?
※九月の「菊に盃」は中国の「菊の節供には観菊をし、盃に菊の花弁を浮かべて酒を飲み長命を願う風習」という故事による。 |
役の洒落っ気 |
|
|
|
|